なんもわからん

さっき作った

『劇場版 ポールプリンセス!!』すごかったね~みたいな話


オタク!『劇場版 ポールプリンセス!!』見た?
みてない?じゃあ見てきて……上映館ちょっと少なめだけど……。

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とりあえず最初はネタバレなしで、途中からネタバレありの感想書きます。

そもそも『劇場版 ポールプリンセス!!』って何?

『ポールプリンセス!!』はYoutubeで2022年12月から~2023年4月あたりにかけてYoutubeでショートアニメ(公式の表記ではWEBドラマ)が公開されていたコンテンツで、今回の『劇場版 ポールプリンセス!!』はその続編?になります。

とはいってもショートアニメ全8話なんでさらっと見れますね。
なんなら一気見動画が公式から上がっててそれが56分。
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偉そうに説明してますけどぼくは面白そうだから劇場公開されたらみにいこうとは思っていて、公開日に劇場情報調べるために公式サイト見てあっこれ一応続編だったわって気が付いてYoutubeでまとめてみてそのまま劇場に向かったにわかオタクなのでなんもこのコンテンツのこと知らん……。

ちなみに2分20秒のダイジェスト動画もあります。
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56分も見てられん!ってせっかちはこれを見て劇場にいけ!
なんなら劇場版冒頭にある程度説明あるしなんも見なくてもいいかもしれん、それくらいのパワーがこの劇場版のライブパートにはあると思います。

劇場版…すげえぜ!

そんなこんなで劇場版見に行った……のですがこれが本当にすごかった!
なんならWebドラマ版見てだいたいポルプリ理解したと思ってましたが全然違う!

まずWebドラマ版がCGで全編進んでたのが作画になってる!ポルプリのCGモデルってすごく出来が良いし動きもコミカルでかわいかったんですが、これが作画になったことで表情での繊細な感情表現ができるようになってる!

次にライブシーンが……とにかくすげえ!
これはWebドラマ版の発表会があくまで「他ジャンル経験のある初心者の発表会」のダンスに抑えられて描かれていたのかもしれないと感じられるほどで、じゃあ劇場版は「ポールダンス日本トップの全国大会のレベル」のダンス表現しなきゃだよねという感じで振りも演出も盛りに盛られとる。Webドラマ版では実質1曲しか本格的に描かれずそこまで見れていなかった「ポールダンスだからこそできる表現」がこれでもかとばかりに大会の中で怒涛の勢いでキャラクターの個性と融合してダンスバトルとしてぶつかり合うの……本当に感動してしまった。
ポールダンス……マジでスゴいダンスのジャンルかもしれないです(作品の話をしろ)。

そしてなんといってもストーリーですね。
ここに関しては……Webドラマ版で残してきた伏線が一気に消化されたというかWebドラマ版と前後編みたいな部分はありましたね、あまり続編という感じではないというかやっぱWebドラマ版のストーリーちょっと物足りなかったの劇場版とセットだからやんけ!こっちまで見たらだいぶ完成度高いじゃん!みたいな気持ちにはなりました。
逆に劇場版だけ見たフォロワーさんがストーリーが物足りないみたいな話をしてたので、やはりどちらも見ないと尺的にはちょっと足りてない部分はあるのかもしれません(劇場版でやってた話がWebドラマ版でのセリフを前提にしていたりするので)、劇場版60分しかなくてライブパートにだいぶ尺とってますからね。

劇場版のストーリー、なんといっても「ポールダンスであること」を結構メタな視点で構成に盛り込んでるのがかなりキマってるんですよ。おもしれ~んだこれが。
うお~~~これがポールダンス!ポールダンスで良かった~~~~!ってなりましたからね。
ここに関してはネタバレでちょっと話したいですね。というわけでここからネタバレで!!



ネタバレあり『劇場版 ポールプリンセス!!』感想・読解

さて、なぜポールダンスだったのかという話をしていきましょう。

『ポールプリンセス!!』が描くポールダンスの要素としてまずこれがあるのかな、と思ったポイントが「痛み・怪我」そして「痛みの先にある景色」です、これはWebドラマ版でも描かれていた要素ではあります。ポールダンスは他のダンスと比べて"ミスをしなくても"怪我が多いダンスかと思います。観客から見るポールダンスは重力を感じさせず優雅で美しく見える反面、その体重を支えるポールを持つ主人公たちの両手は血豆だらけになり、ポールにぶつかる全身はあざだらけになりますが、この作品ではその怪我を肯定的にとらえるシーンが印象的でした。痛みに耐えて成長する中で血豆を眺めながらリリアが言った「まさに……血と汗と涙の結晶だよ!」はキラキラした世界観・アニメではなかなか描写されない血と怪我という"異質"すら受け入れる熱血スポ魂すぎる作品の文脈で印象に残っています。

同様に劇場版であざを銀河になぞらえて「ギャラクシープリンセス」を名乗るのは流石にちょっとキラキラしすぎてギャラクシーの語感の強さもあって笑ってしまいましたが……こんなにかわいいキャラばかりの作品でクソでかい青あざって怪我をそんなキラキラ肯定的に受け止めることがあるんだ……。ただこれって話の中で重要な要素だと思うんですよね。

この怪我・痛みが示すものは何かというと、キャラクターたちの「過去の傷(トラウマ)」ではないでしょうか。Webドラマ版ポルプリの話のメインの軸はヒナノのバレエ・スバルの体操(あとアズミ)と過去の傷でした。
Webドラマ版でのスバルとアズミの話では、「怪我をしても続けられるスポーツ」としてのポールダンスが描かれていました、これを初見で見たときはいまいちつかめていなくて、転向するのはいいけどそれって消去法の選択じゃない?ポールダンスのどこに魅力を感じたんだ?という要素がいまいちつかめていなかったんですよね。
少し脱線しますが、Webドラマ版でヒナノとリリアが衝撃を受けポールダンスの魅力に囚われていたのも私はあまり共感できていなくて、最後の発表会でようやくポールダンスの表現と可能性……すごいじゃん!って主人公たちの気持ちに追いついた部分はありますね。これについては作中で自覚的に描かれた要素ではあるかもしれません。実際に本物を見ていない友人を誘っても乗ってこないみたいな……がっつり視聴者がライブパートみれたの(Webドラマ版だけでは)ヒナノの1曲で最後だけですしね。

で、話を戻してポルプリのキャラクターたちはそういった傷を抱えたままポールダンスに転向してきたわけですが、Webドラマの発表会でバレエや体操(あとはコスプレや日舞)といった過去ダンスジャンルの要素を色濃く残したプログラムを披露したことで、これは過去ジャンルを諦めて別ジャンルに移動したのではなく、過去のジャンルへの想いが地続きのまま続けられる・そしてポールがあることでその表現の幅はさらに拡張されるという、過去の傷を乗り越えるだけではなく過去の傷と共に先に歩んでいく……という作品だったのだなと劇場版を見て改めて感じさせられました。


この過去の傷という要素で話したいことはまだまだあるのですが、ひとまず次の要素にいきます。ライブシーン1曲目、圧巻のダブルス……も素晴らしい内容ではありますが、話したいのは2曲目、ノアのシングルです。

このノアのライブを見て私が衝撃を受けたのはポールダンスによって描かれる「二面性」「変身」でした。
1曲目がユカリとサナの二つ名通り「"王"と"姫"というレッテル通りのライブ」を完璧にこなしてからのノアの「新しい自分を見せるライブ」という構成なのですが、これがポールダンスという要素とばっちりはまっていました。
ノアのレッテルと言えば日舞のたおやかで清楚なイメージではありますが、この仮面を脱ぎ捨て刀で切り捨て炎によって燃やし、着物からポールダンサーのセクシーなイメージを前面に押し出した裏の顔、クノイチへと変身します。

これを表現するアシンメトリーな衣装、半身が着物風で半身がボンテージっていうのがポールダンスで映えてすごいんですよね。ポールダンスの表現で他のジャンルと比較して素晴らしい部分ってやっぱり「回転」の制御だと思っていて、なめらかにゆっくり回転することで衣装の裏側をじっくり見ることができ、そして回転を停止して衣装の側面だけを見せることで全く違う衣装に変身したように見せている。
この表現はすごかったですね。青と赤のオッドアイから赤の目に変わる(!?)のも良かった。

先に話したように「過去ジャンルから地続きのポールダンス」はWebドラマ版から描かれてきたポールプリンセスの要素なのですが、ここでガツンとノアが「過去ジャンルの要素を残したままでありながら真逆のイメージのダンス」という表現を決めたのはやはり構成としてよかったですね。衣装を100%切り替えての完全に違うジャンルというわけではなく、50%の変化できちんと着物という要素を残す二面性を表現しているのがやはり過去を切り捨てず継続を踏まえた成長・変化を描いているのが作品の色で……。

この「衣装による変身」はコスプレでの変身というミオの要素にも接続するもので衣装の力すげー!ってなれたのも良かったです。ミオのライブの話もしましょうか。
「重力を感じさせない動き」ができるのはポールダンスを見た人がまず驚くポイントであり、人魚姫のモチーフで海中を表現するのも納得……ではあるのですが、そこでタイトスカートという衣装によって「足を拘束」するというのが人魚姫に真剣すぎてビビってしまった。
他の演目が足や股を強調する様子が印象的だったのに対して、ここで足を開かねえぞ!という衣装で表現をはじめて最後も地に立たないの、まずポールダンスをはじめたきっかけとして「セクシーではなくカワイイを表現したい」というミオの姿勢としてもノアのセクシーさとの対比としてもめちゃくちゃイケてましたね。「足を使わない」(実際にはめちゃくちゃ使っているのですが)、他人に流されない、人間にならないミオの自分らしさを追求するキャラクターと人魚姫のモチーフが決まっていて良かったです。
まあそれはそれとしてあの人魚姫衣装は普通にセクシーだと思いますが……。


さて順番が前後しましたがリリアとスバルのダブルスの話をしましょう。「仲間・他人の支え」の話ですね。
話としてはダブルスなら仲間の手をつかむことができるぜというある意味王道でよくある話かとは思うのですが、ここでポールプリンセスがちょっと違うのはステージにはもう一本「ポール」という支えがあるという要素ですね。

劇場版のリリアとスバルのストーリーでは、難易度の高いトリックに挑戦するか、それとも安全を取るかという話が展開されましたが、開幕でポールを補助に使いつつ宙返りするのなるほど!ポールがあるから安心して・安定して挑戦できるトリックなのかもしれないと感じられました。
「ポールダンスは怪我の危険をはらむ危険なスポーツである」、これは先にも話したように絶対的な事実であり、特にダブルスの危険度はシングルの比にはならない難易度だということは素人目からも想像できますが、ポールがあるからこそ逆に安全にできる体操の技もあるみたいな話だったのかもしれませんね。こういった危険性に対して真摯で、そしてそれを乗り越えるからこその美しさみたいなのが感じられたのはやっぱりうれしかったです。

ユカリとサナのダブルスがユカリの絶対的なリードで描かれたのに対してリリアとスバルは経験者のスバルがむしろリードされるみたいな対等さで高め合う様子が描かれたのも対比で良かったですね。このへんはユカリのラストの「お互いに高め合うライバルが欲しかった」みたいな話にもつながる要素でイケてたと思います。ユカリのシングルの旗表現、他人を圧倒する御旗ではありますが、それだけでなく他人の士気を高める存在でありたいみたいな要素でもあったのかと思うとまた印象が変わるのが良さだったと思います。


ユカリの話、やっぱり劇場版の集大成的な位置づけだったと思うんですよね。ユカリが抱え続けていたヒナノや他のダンサーをやめさせてしまった「過去の傷」の要素で、でも内面には抜けているところもあるという描写からそのキツい言葉の裏では他人をライバルとして尊重し高め合う相手を求めていたというイメージが反転する「二面性」と「他人の支え」という要素が込められていて。
ユカリの語った「勝利の涙も知ってほしかった」みたいな話、勝利以外認めない冷酷さではなく実は高め合うライバルとしての尊重の言葉だったの、本当にポールプリンセスが描いてきた「痛みの先にしか見えない景色がある」話そのものなんですよね……。だからこそ最後のヒナノとの和解まできっちりやってくれて嬉しかった。

ヒナノのライブパートにも振れておきましょうか、回転によるユカリというトラウマ、そして仲間という支えという上手と下手・表と裏の二面が描写されたのも良かったですが、ユカリがライバルとして立っていたのも責めるためではなく激励するためと考えると、どちらもプラス側の存在だったのかもと和解を見たあとでは思えるの、良いですよね。ステージの肯定で……。

ヒナノのパフォーマンスも発表会でのバレエの要素を色濃く残した地上メインの振り付けから、静と動・ポールダンスらしい高さを利用した大技をガンガン決めていたのは大会で勝つための振り付けを感じさせて印象的でしたね。ヒナノ、ユカリに認められていたり予選1位通過してたりとしっかり強者の側なんですけど、キャラクター的にはそこをあまり表に出さないのでこのメンバーでちゃんとチームのトリを任されていて、そして過去のトラウマを乗り越えられるだけの強さを改めて身につけてきたという成長の説得力がちゃんとダンスにしっかり込められたライブだったと思います。

『劇場版 ポールプリンセス!!』のティザービジュアルのキャッチコピー、「今、回りはじめた 私たちの物語。」一度は止まってしまった少女たちが再度歩みだす姿をポールダンスの要素と絡めて表現していていいなと劇場版を見て改めて感じます。ポールダンスの回転、一度回りだしたらそう簡単には止まらないんですよね。

おわりに

いや~書きたかったことだいたい書いたと思う!やっぱりストーリーの要素をダンスにがっつり落とし込んでると感じられたのがこの作品の一番のすごさだったと思っているので!
このへんの内容を自分の中で整理できたのでまた機会があれば見に行きたいですね~。