なんもわからん

さっき作った

プロセカ『交響する街の片隅で』感想・読解みたいなやつ

交響する街の片隅で感想書くぞ!!

雑感

いや~読解オタクが好きなタイプの話で嬉しい!
今回志歩バナーではありましたがストーリー的な主軸はどちらかというと杏だったんじゃないかな感はありますね。問題解決という点で…。
前回の『イミシブル・ディスコード』は心情の読解の面白さがありましたが今回のイベントは構成読解がめちゃんこ面白い…というか考えれば考えるほどキャラクターの対比対立構造の面白さが出てくるんですよね。プロセカのシナリオが持つ一番の面白さってこの複数キャラクターの立場・環境・心情の対比をひたすらに重ねるところだと思うんですけどその面白さが過去最高に出てたんじゃないかってくらいに出てましたね。

「追う者」「追われる者」の対比

というわけで早速対比構成の話をしていきましょう。
まず当然ですが作中でも触れられた杏と志歩、前回のビビバスキースト『Kick it up a notch』(2023/02/19~)で描かれた「急成長するこはねを見て、自分が並び立てるか不安になる杏」、

(…………こはねはすごいな)

そしてレオニのキーストとしては3つ前、前回の志歩バナー『Don't lose faith!』(2022/08/31~)で描かれた「全力で追いかけてくる仲間たちを信じ応え全力で演奏をする志歩」の対比です。

(みんなはどうだろう。楽しいと思ってくれてるかな。今日のステージ……)

志歩が杏の歌から「仲間のために歌う心」を感じ取り、仲間のために頑張る気持ちいいよね…って自分たちと重ねて杏に話をするのが今回のイベって感じですね。
志歩が杏の歌を聴いたときに、杏が抱えていた不安や焦りでなく「仲間と一緒に歌い続けたい」という想いに引っかかり、そこに価値を見出すのがなかなかにエモなんですよね。

さて、この対比ですが、志歩が実力的に「追われる者」、そしてレオニメンバーたちが志歩を「追う者」であることは異論の余地がなく、その話をするイベントではあるのですが、それに重ねられた杏に関しては単純にレオニメンバーのような「追う者」ではありません。杏に「追う者」「追われる者」双方の側面があるのがこの対比でまず面白いところです。

杏のポジションについて考えていきましょう。こはねから見たらまだまだ杏は憧れの存在のままですし、杏もまだこはねを導く存在である・ありたいという自負はあると思います。つまり杏はレオニのイベントストーリーと重ねたときに「追われる側」志歩の立場でもあるんですよね。そして「追う側」としての認識、杏はRISEのオープニングアクトでのこはね自体が自分を既に超えているという実感を得たというよりは、「こはねの成長性にこの先ついていけるかどうか」という点と、「こはねの歌に凪さんの幻想を見て、間接的にRAD WEEKEND、その遠さを感じた」という点の2つの側面で衝撃を受けたという印象があります。
この辺の杏の心情というか嫉妬心というかこはねに対する想いはさらに過去に描かれ、今回のイベントでも引用されました。かなり前のイベントになりますが『Bout For Beside You』(2021/10/11~)でのビビミク・彰人との会話ですね。

――こはねが伸びだしたせいで、いつかそうできない時が来るかもしれないと思った……ってことか?(彰人)

いいですね~、今対等に並び立とうという形ではなく、常に・未来でも相手を歌でリスペクトさせる立場でありたいというある種の傲慢!ここが関係性が先に合って歌があとについてきたレオニとはまた違う、杏こはのすげえところというかビビバスというユニットが描くストリートミュージックの絆の在り方なんですよね。今回のイベストで引用されなかったこの後の流れを簡単に要約すると、彰人曰く「杏とこはねの関係性はそのリスペクトから始まったのだからそれが消えることに不安になることは仕方なく、一生磨き続け対等であろうとするしかない」杏曰く「この不安・焦り・憧れの気持ちを大事に受け止め歌につなげていきたい、また揺れる時が来るかもしれないが」という感じでしょうか。今イベ前イベと何回揺れてんだという感じではありますけど…まあビビストの物語はひたすらに追いかけ続ける物語ですからね。言ってしまえば今回のイベントもこの『Bout For Beside You』と同じ話ですよね、あまり良くない気持ちも清濁併せ呑んで歌へと昇華させろという話なので。

で、ここまでが過去にも描かれた杏にとっての内省・自己認識の話なのですが、ここから別の視点が加わるのが今回のイベのキモになります。

……みんなの気持ちや演奏が、私に力をくれるから。

その追う側の気持ちがまた、自分だけでなく追われる側・あるいはチーム全体にとっても良いものであるという視点ですね。
初期のプロセカはとにかく「自己認識・自分の気持ちの在り方こそが大事」というテーマを音楽を通じて大事に描いてきたと思いますが、最近は少しづつ今までサブテーマであった「その自己認識が他人の気持ちを動かせる」ことを主題に置きはじめたのではないかと感じます。自己満足の音楽からプロとして・仲間に・他人に聞かせる音楽という芸術の在り方へのシフトなのかな、という印象がありますね。

ブランクと技術の対比について

さて今回のイベントでもう1つ大きな対比要素としてあるのがブランク、つまり活動をしてなかった期間の話だと思います。
仲間と別れて1人で音楽を続けていた志歩(と音楽から離れて過ごした仲間)、こはねに出会うまでずっと1人で歌い続けた杏(と素人だったこはね)、絵画教室から逃げた絵名(と続けていた友人)、ショーから離れていた寧々(と活動し続けていた青龍院櫻子および司)ですね。

ここに関してはまず志歩の視点で見た各キャラクターと各キャラクターの気持ちのギャップが面白さとしてあります。
彼女たちはこのイベントで自分の実力に思い悩んでいますが、志歩から見た杏は「一歌たちに歌を教えていた歌のプロフェッショナル」(『スクランブルファンフェスタ』(2021/10/01~))であり絵名は「穂波や子供たちに絵を教えていた絵のプロフェッショナル」(『好きを描いて♪レインボーキャンバス』(2022/09/09~) )であり寧々は「フェニックスステージの中でも頭抜けて上手い歌姫」(『響くトワイライトパレード』(2021/02/09~))です。特に寧々の歌は志歩がレオニで活動し続けることを決断させた直接的に重要な要素ですね。

それなのに、ここでショーをやる理由ってあるの?

彼女たちの焦りは、少なからずそのブランクに起因していたわけですが、志歩、他人から見たら「十分上手いのに」なんですよ。「教えることができる側」は「追われるべき側」ですからね。今回のイベストでの「絵名は完成度に納得がいっていなかったが、絵名の表現したいものは伝わっていた」で描かれたのは、第三者からの視点によって「自分の目指す場所・価値(届かない・追う側)」と「他人が認める自分の場所・価値(今の位置・他人からは上の存在・追われる側)」の両側面は独立して両立し得るという解釈です。その解釈が、「ブランクの期間であったり焦りの感情が今の自分の歌・表現を作り上げている」という自覚に繋がり、そして過去の肯定に繋がっていくわけですね。

ミク、私……。音楽をやっててよかったな

で、この4人の悩みに共通していたのが仲間と共にありたい、並び立つ存在でありたいといった気持ちで、並び泳ぐ金魚をよいと感じる気持ちなんですよね。
最近のイベントでの絵名の面倒見がいい姉キャラアピールもここにつなげるためだったと考えるとかなりロジカルな伏線の張り方だったかなと思います。

そしてその結実として描かれるのが、悩みの解決であると同時に追う者追われる者構図の破壊です。このイベントストーリーの中では杏を導く側だった志歩と、導かれる側だった杏という関係をぶち壊してお互いがお互いを引っ張り追いかけ寧々も加わっての上も下もない、あるいは上であり下である、追う側であり追われる側である、杏がこはねとの関係として永遠にそうあり続けたい理想としている、あるいは志歩がレオニメンバーとの将来に夢見ている、寧々が司や青龍院たちと並び立つ関係としてありたい形のメタファーとしての対等なセッション、交響曲なんですよね。

……あの、胸が痛くなる感じじゃない。すごく楽しそうで――こっちまで弾んでくるみたい)

かつて迷う志歩を導いた寧々の歌が今回は迷う寧々を導く歌として聞こえてくるのは良いですよね、ここにも追う側と追われる側の逆転あるいは共存があります。

この交響の中に存在した平等が描くものは、彼女たちが未来・将来に願う「対等な立場」のメタファーであると同時に、丁寧に描かれた「1人で歌う中で描かれた悩み・追う者追われる者の構図」から「複数人で歌う中に優劣はなく楽しさだけがある」、つまり追いつく追いつかないとか1人で歌ってるから悩むのであってちゃんと真剣にやってるなら・やってるからこそみんなで歌ったらそんなの関係なく楽しいぜという「未来」ではなく既に現在にある・現在にあった・過去からずっとあった純粋な仲間と歌う多人数音楽の楽しさ・対等さの再発見という構図でもあるのではないでしょうか。

この2人のあるいは3人もしくは4人(?)の出会いが「街」で聞こえてきた音楽に込められた想いから、というのもビビッドストリートらしく、そしてプロセカらしい音楽への信頼で良かったですね。
とそんな感じでどうでしょう。

おわりに

この記事書いていて改めて感じたのはこのイベントってキャラクターの心情として特に目新しいことは書いてはいなかったのかな、という点で、でもそれでも今まで全く絡んでいなかった過去とキャラクターたちをひたすら引用して接続して対比させたことでこんなにも面白いストーリーになるんだなという驚きですね。
私はこういう構成の整理をする記事が書きたくてプロセカ感想記事を書いている!

まあそんな真面目な話はおいといて志歩がずっと生暖かいツラしてんのめっちゃワロタとかイベページ曲のインストベースかっこよすぎとかそういう話もある!
おわりだよ~。