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プロセカ『船出の前のワンデイトリップ』感想・読解みたいなやつ

『船出の前のワンデイトリップ』感想書くぞ!

雑感

今回は前々イベにして前モモジャンイベ、『Re-tie Friendship』で描かれた「アイドルと友情の二者択一」という愛莉とみのりへの問いを改めて遥に問う形のストーリーであり、ストーリーラインとしてはかなりシンプルな話でしたが、レオニのテーマである「関係は変わらない」「永遠」をモモジャンのテーマ「想いは消えない」「復活」に重ねたのは純粋に混合イベとしての良さがありましたね。
というわけで早速見ていきましょう。

『アイドル』という非日常と『普通の学生』という非日常

さて、先に書いたように今回のストーリーのキモとしてある「アイドルと普通の学生の視点」のギャップ・背反性は、『Re-tie Friendship』で愛莉・みのりの視点で既に描かれたものです。
maisankawaii.hatenablog.com

『Re-tie Friendship』の中で遥は「アイドルとしての視点」から単位制に戻ることを選択するキャラクターとして描かれており、その中に一切普通の学生の葛藤は描かれていませんでした。
これは遥の持つ「アイドルに対するストイックさ」と「先輩アイドルとして既に普通の学生としての立場を持っていない」キャラクター性を強調しており、普通の学生としての記号を持つみのりの悩み・選択との対比を際立たせるものだったと思います。

(だからもう、こういうことに参加できるのは今回が最後になるのかもしれないな)

今回のイベントでの普通科の思いを語る様子からも、「普通の学生」としての生活が終わることに対してある種の達観・諦めが感じられます。
そんな遥の過去でなく現在の「普通の学生らしい友情」に対する想いを描く今回のイベントは、『Re-tie Friendship』で描かれなかった遥の決断に対する内面描写の補足としての意外性が面白さの1つとしてあるのではないでしょうか。

さて、今イベで描かれる遠足ですが、これは当然遥の「普通科での普通の学生としての生活」のメタファーでしょう。『Re-tie Friendship』で愛莉がアイドルとしての生活と引き換えに失ったものですね。
要素としては「普通の学生生活」「一時的な楽しい思い出」「新しい友人との出会い」「限られた時間」などがそれに当たります。
遠足を最後の楽しい思い出にしようという遥の想いが、そのまま普通科としての生活も楽しい過去の思い出になるだろうという対比描写ですね。
遥にとっては「アイドルとしての生活」の方が普通であって「普通の学生」としての短い時間の経験の方が遠足のような非日常でもあるという相互のメタファーになってもいます。

一方でこの遠足は学校生活の象徴でありながら「学校の外」で描かれるものであり、遠足では普通の学生にはない「学校の外ではアイドル」としてのエピソードが同級生や遥に思い知らされるという「普通の学生としての遠足」「普通の学生らしくない遠足」の両面が描かれるのも面白いところですね。「学校を出たら(普通科生活が終わったら)もう普通の学生として生きられない存在」が浮き彫りになるんですよね。
それは同級生に対するアイドルオーラであったり、カレー屋でのロケ経験や飾られたサインだったりします。

……そんな、まじまじ見ないでよ。ASRUNにいた頃のだから、今とは違うんだし(遥)

来年の修学旅行への期待を語り将来を語る咲希たちに対する遥の「ちょっと頼んだカレーが辛かっただけ」、"辛いカレー"は過去のアイドル時代の記憶で、ASRUN時代の記憶で、それすなわち過去の思い出、もう戻れない過去・戻れない普通科の生活への想いですよね。未来から見たらこの楽しい遠足の思い出もカレー屋のサインのように過去の思い出になるのだろうという話です。

遠足の中で遥は子供たちに見つかり、その対応に追われます。このシーンは遥が普通の学生の本領ではなくアイドルとしての立場を優先しているわけなのですが、過去イベント『あの日の夢の、彼方向こうへ』(2022/11/30~)を思い出してください。

私はそれに……すごく勇気を貰えた

遥が憧れていたアイドルが、アイドルをやめてからもたくさんの人に希望を届けていたことを知り、より多くの人に思いを届けようと思った話ですね。
ちょっと強引な接続な気もしますが、遥もアイドルでない状態の「普通の学生」の立場であっても少しでも多くの人に想いを届けたいと願っているわけで、そこに遥にとっては公私の区別はあまりなく、プライベートでもアイドルとして立ち回り続けたいと思っているのがアイドル桐谷遥というキャラクターなのでしょうね。

ただ、そんな遥も咲希や一歌に対して悪いことをしているなとは感じているわけで、これは咲希や一歌もアイドルとしてのファンサービスの対象として見ているからなのではないでしょうか。

というわけでレオニの要素について踏み込んでいきましょう。

モモジャンが描く『変化』とレオニの描く『永遠』

さて、ここで少しモモジャンとレオニの方向性の違いについて考えてみましょう
モモジャンはざっくりいうと過去の居場所でのアイドル活動が上手くいかず、新しい居場所に変わったことで成功するというストーリーです。
だからこそ、モモジャン・遥のストーリーにおいて、「変化すること」、言い換えれば「自分の力で新しい環境に挑戦すること」「過去の環境での関係を切り捨てる/離れること」はポジティブな意味合いを持っており、普通科を離れて単位制になることは自然な流れと言えるのでしょう。この辺は転科に際して悩んでいたみのりにはない要素でしょうね。

一方で、レオニは環境が変わっても子供の頃に抱いた気持ちは同じというストーリーです。ここには話の主軸として「変化しないこと」「過去の関係を継続すること」が中心にあり、「変わらない想いは環境や時間の変化を超越する」どちらかというと環境の変化をネガティブ…とは言わないにしても軽視するストーリーを展開しているのではないでしょうか。

このレオニの「変わらない想い」要素は類似のエピソードがモモジャンにもあり、それがモモジャンのエピソードでほぼ毎回語られる「アイドルへの想いは消えていなかった」ですよね。そして『Re-tie Friendship』で描かれた要素は「友達への想いはアイドルへの想いと同じように消えない」であり、それはつまり「環境が変わっても友情・想いが変わらなくていい」これがレオニの要素と接続し「変わらない友情は環境の変化を超越する」まで持っていくことこそが今回のイベントでのキモの要素でしょうね。

さて要素を整理したところでイベントストーリーに戻りましょう。

それでも、桐谷さんと一緒に、遠足を思いっきり楽しみたい

ファンを優先する遥に、咲希と一歌は遥にもっと一緒に遊びたいという想いをぶつけます。「他人のために」「ファンの想い」を軸に話を動かすモモジャンの正反対、この強引さと身勝手さ、「私の想い」「私たちの想い」こそがレオニードのメインストーリーを動かしたんですよね、ここからはレオニードのターンです。

ここから「アイドル」の要素が一歌と咲希によって「普通の学生」に塗り替えられていきます。
「アイドルとして必要な変装」は、ただ「変装を建前にファッションショーを楽しむ普通の学生」に変わり、「ファンから逃げて乗った水上バス」も「お菓子の写真を上げる学生」に。

しかし遥も負けていません、それはもう「アイドルとのツーショ撮影会」になってしまいます。この辺の「普通の学生としてふるまう遥」と「アイドルとしての遥」が次第に分けられたものではなく1つになって行く感じ、良かったですね。

そしてレオニードの結成話を聞いた遥は不安に思いつつもしばらく会えなくなっても自分たちの友情は不変であると感じます。

(――どうってことないんだ)

この辺は過去の仲間と離れてしまったモモジャンのメンバーにとっても肯定できればうれしい話ではあるのでしょうね。

そして遥の行くことの出来ない修学旅行、これを咲希は自分たちで計画すればいいと提案します。
これマジで天才よな~、用意された枠がなければ自分たちがやればいい、これってモモジャンの文脈なんですよね、「やりたいことができる事務所がなければフリーで活動すればいい」ですよ。

遥の「仕事が忙しくて都合がつかないかもしれない」、「アイドル」としての理由を「一歌と咲希もバンドが忙しくなるから」という共通項でくくりつつ、オチとしてのソフトテニス部の「私達も部活があるから、お互い様」。

私も、遊びに行きたいな。みんなとなら――どこに行っても楽しいだろうし(遥)

ここ本当素晴らしいんですよね、アイドルとしての忙しさは特別でも何でもない、普通の学生だって暇じゃないし忙しいのは同じであり、だからこそ対等の友人としてこの友情が成立するんですよ。マジで良いシーンだと思います。プライベートでもアイドルであり続けた遥だからこそ、普通の学生もアイドルも変わらんという結論がすっと入るの、素晴らしい結実だと思います。

仕事で忙しくなるかもって伝えたんだけど、お互い様だって

名前呼び、同級生から友人へのクラスアップですよね。

モモジャン、「辛い過去」「新しい幸せ」を描いてきたからこそこれから新しい環境へと変わっていく遥が「過去になる普通科の思い出」を幸せなものとして残していける事実が、単純な「過去の再評価・肯定」とはまた別の文脈でいい話だったな、と思いますね。

(そうじゃなきゃ、こんな気持ちになれることも、こんなにみんなと仲良くなる機会もなかったから)

おわりに

いや~なんか今回作中で全部説明されてたから普通にいい話だったな~って連呼するだけの感想になっちゃったな!
おわりだよ~。

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