なんもわからん

さっき作った

プロセカ『Re-tie Friendship』感想・読解みたいなやつ

『Re-tie Friendship』感想読解書くぞ!

雑感

来ましたね~、プロセカ道徳の教科書シリーズ…。(そんなシリーズはない)
ストーリーとしては「仕事と学校の両立」、教訓としては「勇気を出して友達に話しかけてみよう」、テーマとしては「想いは消えない」あたりでしょうか。

話としてはシンプルだったかと思いますが、愛莉の過去話と友人との対話で描かれた悩みや不安の心理描写には本当に胸をえぐられるかのような繊細さがありました。

というわけで見ていきましょう。

桃井愛莉のアイドル性とは

さて今回のイベントストーリー、主役はもちろんバナーの愛莉ではあるはずですが、ストーリーの軸となる「仕事と学校の両立」「単位制への移行」の主役となるのは愛莉ではなく、みのりのはずです。これは単に話の都合上そうなった…というわけではなく、今回のイベントでの桃井愛莉というキャラクターの性質を描く上で「他人の気持ちを推し量る」こと、そして「他人へ口を出すこと」の難しさという2点がとても重要だったからだと思います。つまり、「みのりが悩み決断すること」に対して「愛莉が何を考えたか・どういう行動をするのか」がこの話の構成のキモなんですね。

今回のイベント、とにかく愛莉のモノローグがめちゃくちゃ多いです。比率でいうならモノローグ率過去一レベルなんじゃないかな…。
過去のモモジャンのストーリーにおいて、愛莉は高い自主性と行動力で提案をする優秀なアドバイザーとして描かれてきました。直近の愛莉バナー『青空の先、輝きを追いかけて』(2022/08/10~) でも自信満々にみのりにアドバイスする姿が見られましたね。その愛莉ですが、今回みのりにアドバイスする上でかなり慎重な態度をとっていることが繰り返し描かれています。

(何を選ぶのかは……みのり自身だわ)
(それを決めるのはみのりで、わたしは口出しする権利なんてないわ)

これはもちろん定時制になったことで愛莉が過去の友人との関係を悪化させてしまった、という理由で歯切れが悪いという理由もあるでしょうが、愛莉はとにかく相手の気持ちを慮り尊重することを第一にしているんですよね。自分の意見を相手に押し付けることを忌避してると言い換えてもいいです。『青空の先、輝きを追いかけて』でもアドバイスした上で「これは私のやり方だからみのりらしいやり方を探していってほしい」みたいなことを補足していますからね。

この辺の他人の決断に対する愛莉の「余計なお世話かもしれない(から口が出せない)」という繊細さが今回のイベントでモノローグによって強く強調されているのは、普段のぐいぐい回りを引っ張っていくイメージと直感的に反するものですが、思い返してみると「ファンの求めるもの・アイドルとしてのイメージ」を大事にしてきた・しすぎてしまった結果アイドルをやめることになった愛莉の過去から考えると結構自然なのかもしれないと思わされますね。

ここで愛莉と友人であるあゆみの出会いのきっかけの話を見ていきましょう。

だから、愛莉ちゃんがアイドルになりたいって話してくれた時も、変だなんて思わなかったよ。むしろ、愛莉ちゃんにはすごく向いてるって思ったんだ。

話し相手がおらず不安になっていたあゆみに気が付き、わざわざ声をかけてくれた愛莉の姿こそが愛莉のアイドル性であると語っています。ここで愛莉のアイドル性として強調されているのは、「不安そうなクラスメイトに声をかけたこと」も重要ではありますが、それよりも「他の人と話している中で、あゆみの不安に気が付いたこと」と見るべきでしょう。つまりは他人の気持ちを推し量る能力ですね。

しかしこの友情は2人がお互いを思いやり、行間を読みすぎたたために崩壊してしまいます。

え? あ……そうね!次は一緒に――

愛莉の他人を笑顔にしたい・不安を取り除きたいという強いアイドル性は、相手の笑顔を奪うような言動を強く忌避します。

うん。ありがとう愛莉ちゃん。気をつかってくれて(あゆみ)

そしてあゆみは、その逡巡を誤解し、遠足にいけなかった愛莉に対して無神経なことを言ってしまったと後悔します。そして、愛莉に弁明の暇を与えず楽しい遠足の写真の話をはじめるわけですね。これは誤解ではあるのですが、愛莉にこれ以上この話題を続けて悲しい気持ちになって欲しくないという話題の転換であって、そして愛莉も楽しい話がはじまったならそこで話を蒸し返して雰囲気を悪くするようなことは良しとしないんですよね。モモジャンは・愛莉は「笑顔を与えること」を散々描いてきたわけですが、逆説的に「笑顔を奪う」ような話題転換は良しとしないと考えるとここで口が出せない、友情の復元よりも笑顔を優先してしまい次第に盛り上がっていく楽しい会話を蚊帳の外で聴くしかない愛莉は本当に「プロ」の、学生ではなく職業人としてのアイドルになってしまったとして読むとめちゃくちゃ悲しいシーンなんですよね。

「友情」と「想い」の永遠性

(みんなと遊ぶ時間よりも、仕事を優先してきたのはわたしだし。あゆみに……ああ言われるのも……)

友人たちの輪に混ざろうとすることでその楽しい雰囲気を壊してしまいそうになったと感じた愛莉は、アイドルの道を選んだものとして、この時の気持ちを「寂しさ」と表現し、そしてこの疎外感から次第に友人たちと疎遠になっていってしまいました。

ふたりの間にできた、その想いのつながりは 簡単には消えたりしないと思うな

しかし、それをKAITOは友情は消えていないのではと語ります。アイドルをやめてもアイドルとしての想いが消えなかったように。

ここにきてモモジャンのテーマとしてある「不滅」そして「復活」を友人との絆に重ねてくるのアツすぎる!愛莉のセリフ「想いは消えない」天使のクローバーなんだよな。

先にも書いたように、愛莉は本来相手の気持ちに寄り添うことができるキャラクター・アイドルと考えると、1年前にあゆみの想いを見失ってしまっていたのは本領を失ってしまっていた状態、アイドルとして死んでいた状態であったためと読むと面白いかもしれません。

そして愛莉はあゆみに声をかけ、仲直りして友情を再確認してハッピーエンドという感じですが、この「声をかける」が友情のはじまり・広がり・再始動という対比になっているのもいいですよね。
「あゆみとの出会いで声をかけた愛莉」「あゆみとその友人に声をかけた愛莉」そして「仲直りのためにあゆみに声をかけた愛莉」。
「声をかけられること」が桃井愛莉のアイドル性であり強さなんだよな…。

わたし、これからも愛莉ちゃんと――ちゃんと友達でいたいんだ(あゆみ)

最後にみのりが想いを語ってエンドなのもいいですよね。ビジネスライクな「アイドル」としてなら愛莉の話もみのりの話も4人で共有する必要性はないわけで、でもここでそれを4人が聞きたいと感じた・聞かせたいと感じたのはこのイベントで語られた「自分の気持ちを伝えること」つまりビジネスではない、「友情」としての「アイドル」の絆であり、そしてこのイベントでの「友情」は「不滅」なわけで、それすなわち「MORE MORE JUMP!」が「不滅」であり「永遠」であるということの示唆なんだよねえ、つまりは改めてのRe-tie Friendshipという感じでどうでしょうか。

おわりに

「言葉にしなきゃ伝わらないから疎遠になった友達ともう一度話してみよう」なんて道徳の教科書みたいな話ではあるのですが、流石にここまで桃井愛莉というキャラクターとモモジャンのテーマに絡めて描かれるとめっちゃ面白かったですね。
なんかあーだこーだ書いたけど読んでた時はマジで仲直りできてよかったね~~~~~~~~以外の感情がなかった!

おわりだよ~。