なんもわからん

さっき作った

プロセカ『ロミオとシンデレラ』カバーの歌詞解釈がおもしろすぎる!の話

※当記事にはプロセカのメインストーリーおよびイベントストーリーに関するネタバレがあります。

こんにちは~。

みなさんはロミオとシンデレラという曲を知っていますか?
ボカロに疎い私でも2009年当時かなり印象に残っている曲ですし、ボカロに詳しくないって人にもそれなりに知名度の高い曲なんじゃないでしょうか。
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誰もが知っているロミオとジュリエットそしてシンデレラという作品を冠したインパクトのあるタイトル・疾走感のあるメロディーに突然挿入される電子音の衝撃・まだ幼さの残る子供のかわいらしさと大人でセクシーな雰囲気の両方を併せ持つ恋の歌詞、良い曲ですよね。


さて今回はこの原曲ではなく、SEGAとColorful Paletteのアプリゲーム、『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』通称プロセカの作中ユニットMORE MORE JUMP!通称モモジャンの桃井愛莉と日野森雫、そして初音ミクがカバーしているこの『ロミオとシンデレラ』
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の歌詞解釈がなかなかキャラクターにマッチしててすげえかもしれんな…ということに唐突に気が付いてしまったのでそれについて書きます。(唐突に気が付いてしまうシリーズ)(解釈は公式のものではなく私が勝手に考えて楽しんでるだけなのでみんなも君だけの最強の歌詞解釈を考えよう!)

モモジャンについて

さて、プロセカの作中ユニットは往年の曲から最近の曲まであらゆるジャンルのボカロ名曲をカバーしていますが、その割り振りがどうなっているかというと、例外はありますが基本的には曲調によって割り振られているように感じます。モモジャンはかわいい曲担当することが多い感じですね。その結果女の子らしい恋愛曲は大体モモジャンが担当になっています。
プロセカ自体は現状恋愛感情の要素を排したゲームですので、どうしても恋愛曲がキャラにマッチしないところはあります。そんな中でモモジャンはアイドルユニットであり、恋愛要素を匂わせない清純さを持つユニットが恋愛曲をカバーすること自体にアイドルらしさというか「そういうもの」って面白さを感じさせる意図はある気はしますね。それはそれで歌詞内容とのミスマッチさを楽しめるジャンルというか…。
まあ私がキャラソン解釈のオタクだからそういうところ気にしてるだけでボカロに限らず楽曲カバーってたぶんキャラソンジャンルではないですからね、好きな曲歌わせようぜ!

そんなわけでロミオとシンデレラについて、この曲はかなり過激な恋愛曲なわけですが、これをモモジャンのキャラがカバーしてることについて、今まで私は深く歌詞を意識して考えてはいませんでした。やったーカワイイ!3DMVもついてる!マジで良い曲!この曲…ちょっとエッチじゃない?(IQ180楽曲博士)と私は喜んで何度も聞いていたのですが、もしかするとモモジャンの2人にこの歌詞歌わせたのもっと深い意味があるんかもしれん…ってさっき唐突に気が付いたんですよね。(さっき!?)

さてどうせ私のブログ読んでくれるフォロワーの大半はプロセカをプレイしていないので、クソ雑にモモジャンについて説明しておきます。モモジャンはアイドル力が強すぎて世間が付いてこれず追放された国民的アイドル3人がアイドルを夢見る1人の少女に触発されて4人でユニットを組んで改めてYoutuberとしてアイドル活動を1から再開するというなろう系最強追放やり直しユニットです。(違くない?)

そしてこのロミオとシンデレラをミクさんと共にカバーしているのがバラエティタレントとして売れすぎてアイドル活動ができなくなった桃井愛莉と、顔が最強で仕事が増えすぎた結果メンバーに妬まれて孤立した日野森雫の2人なんですよね。

QT時代の桃井愛莉さん
チアデ辞めた頃の日野森雫さん

ロミオとシンデレラは両親=大人に抑圧された中それに反発して恋人に逢いに行くみたいな楽曲です。モモジャンのこの2人には大人=事務所の都合に振り回され、彼女たちが焦がれるアイドルを目指せなくなったという共通点があり、その視点を軸に歌詞を見ていくと一気に解像度が上がるって話をしたいんですよね。というわけで歌詞を見ていきましょう。

桃井愛莉と『ジュリエット』

全部見せてよ
あなたにならば見せてあげる私の…

さていきなりですがサビ前のこの部分です。
なんでいきなりここかというと私がこの部分で唐突に気付きを得たから…。

原曲ではちょっとアダルティにサビに入るめちゃくちゃ盛り上がるところですが、ここ愛莉のパートなんですよね。
先にこのロミオとシンデレラのカバーは愛莉と雫の過去と重なる歌詞であるという話をしましたが、愛莉にはそのQT所属時代に『全部』に関する印象的なセリフがあります。

それでみんなに、よーし明日も頑張るぞー!って、希望を持ってもらえるような――そんな、スーパーアイドルになりたいの!(愛莉)

バラエティ番組にスカウトされる前の愛莉が当時のユニット仲間に自分の目指すアイドル観を語るところですね。

この後の愛莉はバラエティタレントとして人気になり、芸人的で雑な扱いを受け、事務所の方針としてアイドル活動もできずにタレントとしての自分に疑問を抱いてやがて事務所を辞めることに繋がっていくのですが、それより前の、原点・オリジンの時点で本来他人を楽しませるバラエティ的な個性を自分の武器として肯定できていたんですよね。
それを考えると愛莉の『全部』の一部であった、『私の…』が歪まされ直視できなくなったバラエティタレントとしての愛莉を示すようにも感じられませんか?
原曲のピー音は「子供に聞かせられない内容」の要素ですが、ピー音が流れるのは放送規制、つまりはテレビ番組、もっといえばバラエティ番組のイメージはありますしね。

原曲の単純解釈としてはここは純粋で真っすぐな恋の気持ちとして解釈しても全然いいし自然とは思うのですが、親の抑圧からくる反発心によって生じた自暴自棄な自傷行為・破滅的な恋である一面をチョイスしてこの部分をQT時代の愛莉に重ねて歌わせたと考えると…相当えぐい!

ずっと恋しくてシンデレラ
制服だけで駆けていくわ
魔法よ時間を止めてよ
悪い人に 邪魔されちゃうわ

逃げ出したいのジュリエット
でもその名前で呼ばないで
そうよね 結ばれなくちゃね
そうじゃないと楽しくないわ

さてサビ部分、原曲では親に望まれない恋に走る自分をジュリエットに見立て、そしてシンデレラのような結末が良い、悲劇のジュリエットにはなりたくない、と解釈するこの曲のタイトルにもなっているめちゃくちゃセンス抜群の歌詞なのですが、ここも見かたによっては愛莉要素が高いです。
愛莉の目指すシンデレラとは、当然愛莉の目指すアイドル像、バラエティタレントとして活躍する前の、純粋なアイドルとしてステージに立てていた自分です。制服といえばアイドルのメタファーですからね、逆か?「時間を止めて」も「悪い人に邪魔される」もそういう『過去に戻りたい』の解釈で問題ないでしょう。

そして何と言ってもジュリエット、「その名前で呼ばないで」です。
ここに関しては、愛莉の過去に向き合うイベント『ハッピーラブリーエブリデイ!』にてそのまんまのストーリーがあります。
モモジャンとして事務所にタレント活動を強制されずにいざアイドルに専念できるぞと活動を始めた愛莉に仕事依頼のメールが届き、そこに書かれていた名前に愛莉はショックを受けるというくだりがあります。

(ただ、あの時のことを思い出すと……)(愛莉)

その名前こそバラエティ番組で愛莉が扮していた謎の人気キャラクター、バラエティアイドル仮面・ハッピーエブリデイです。

あの番組だと桃井愛莉って名乗る回数よりハッピーエブリデイって名乗る回数のほうが多かったわね(愛莉)

まあなんやかんやあってこのイベントストーリーでハッピーエブリデイ時代の愛莉は肯定されるので、バラエティタレントとしての愛莉は全然悪い思い出ではなくなるのですが、このイベント以前の時系列としてはそれなりに黒歴史の名前となるわけです。原作ロミジュリでロミオとジュリエットが出会うのも仮面舞踏会ですしね。仮面つながり。
「そうじゃないと楽しくないわ」もファンを楽しませることを考え続けた愛莉にマッチした歌詞かなという気はしてきませんか?

ねえ私と生きてくれる?

ハッピーエブリデイって、ちゃんとアイドルじゃん(Tシャツの男の子)

日野森雫と『シンデレラ』

ずっと恋しくてシンデレラ
制服だけで駆けていくわ
魔法よ時間を止めてよ
悪い人に 邪魔されちゃうわ

さてこれはプロセカを知っている人には今更言うまでもないと思いますが、雫には『変身』が重要なテーマとしてあり、シンデレラがモチーフとなるエピソードもあるキャラクターです。イベント『Cast Spell on You』にはアイドル衣装を魔法と見立てるエピソードがあります。

きっと私は、あの衣装にキラキラ輝けるような魔法をかけてもらっていたんだと思うの(雫)

この衣装あわせのストーリーは、デビュー直後で、雫がまだチアデのメンバーとも仲が良かった時の話で、メンバーとの和気あいあいとした会話も語られています。
制服の雫はアイドルではないダメな雫であり、本当の雫でもあります。
シンデレラを軸に考えると、「大人は寝る時間」も魔法の解ける時間の意味合いと読めたりもしますね。

背伸びをした長いマスカラ
いい子になるよきっと明日から
今だけ私を許して

ここ愛莉のパートですね、原曲では子供らしくない分不相応な化粧をして大人に近づくという描写ですが、メイクはアイドルにおいて番組出演前のイメージがありますね。
愛莉も雫も、メンバーを差し置いて1人だけ仕事が入っていることに対しての「許して」かもしれません。

黒いレースの境界線
守る人は今日はいません

さてこの歌詞、原曲ではちょっとエッチなニュアンスの歌詞でもありますが、とりあえずアイドル衣装の対比としての黒下着、そして「守る人は今日はいません」です。
守る人、雫はデビューからずっと要領の悪さと天然さを努力で補ってきたものの、ずっとチアデのメンバーに支えられてきました。

それなのに、私の仕事だけはどんどん増えていって、ついにセンターまで担うことになって――(雫)

しかし、雫だけが売れるにつれ、次第にメンバーから疎まれるようになっていき、最後には衣装を隠されたりもしてしまいます。
メンバーと楽しく衣装合わせをしていた時代とどうしても比較してしまいますね、「魔法よ時間を止めて」です。

ロミオとシンデレラの歌詞からは、この主人公が両親に溺愛されてきたことが伺えますが、雫もまさに他人に流され庇護されて生きてきたキャラクターなんですよね。「ママのお菓子ばかり食べたせいね」です。

パパはでもねあなたのこと嫌いみたい

雫の『変身』は衣装による魔法の変身の他にまだあります。というか衣装の変身があとから出てきたので基本的にはこっちが本筋ですね。雫は事務所の方針でその天然なキャラクターではなく、ミステリアスな完璧超人を演じさせられていました。パパ、つまり大人でありプロデューサーの発言ですね。

――日野森に望まれてるのは、ギャップじゃないんだ(プロデューサー)

あるいは雫はメンバーにも疎まれていました、まあ「嫌い」ほど強い言葉ではないかもですが…

あーあ、本当……(メンバーC)

連れ出してよ 私のロミオ
叱られるほど遠くへ

ここ雫パートですけど雫を叱ってくれて助けてくれて支えになってくれる存在と言えば…

どんなに不安でも、辛くても、前を向くの!(愛莉)

雫は他人に流されやすく他人の助けが必要な人間ではあっても自分から他人を頼る人間ではないと思うのでこの辺の歌詞を素直に雫に重ねるのは私としては微妙に解釈違いなんですが…まあ愛莉に助けを求めるくらい追い詰められている雫もそれはそれでいいか!

鐘が鳴り響くシンデレラ
ガラスの靴は置いていくわ
だからね 早く見つけてね
悪い夢に 焦らされちゃうわ

きっとあの子もそうだった
落としたなんて嘘をついた
そうよね 私も同じよ
だってもっと愛されたいわ

ほら 私はここにいるよ

さてシンデレラがアイドルのメタファーであるならばガラスの靴はアイドルである資格であり、ガラスの靴を落とす行為はアイドルの夢を諦めることと言い変えても良いでしょう。
ここは自分がもはやアイドルではないとして事務所を辞めた愛莉、そしてアイドルとしての心が自分にはないとして事務所を離れた雫の2人が、実際心の底ではアイドルを諦めきれていなかった、あるいは他方からみたらアイドルであり憧れのままだという「嘘」を示しているように思えませんか?「きっとあの子もそうだった」です。

この手に勇気をもらっている人がいることも、忘れないでほしいな(雫)
わたしも、雫に何度も勇気をもらってきたわ(愛莉)

「もっと愛されたい」「私はここにいる」、2人がアイドルであり、あり続けたいと願っていたことなんだよな。

私の心そっと覗いてみませんか
欲しいものだけあふれかえっていませんか
まだ別腹よもっともっとぎゅっと詰め込んで
いっそあなたの居場所までも埋めてしまおうか

でもそれじゃ意味ないの

ここ歌い分けが結構複雑ですが…。
前半はファンの需要と本人の希望のズレの話っぽくは読めないこともないですね。
「ぎゅっと詰め込んで」はレッスン外でも努力を重ねた雫の姿、「居場所を埋める」は他メンバーからセンターという居場所を奪ってしまった雫の姿を思わせます。あるいはスケジュールに追われてステージという居場所に居られなくなった2人のことかもしれませんね。

『違う人にやってもらった方がいい』なんて……、みんなの憧れの場所を簡単に放り出すようなことを言ってしまった(雫)

忙しすぎたことが引退の引き金となった2人にとって、シンデレラの「時間に追われる」要素はなかなかマッチしている気もします。

まだ別腹よもっともっとぎゅっと詰め込んで

ここモアモア要素。

大きな箱より 小さな箱に幸せはあるらしい

ロミシンの歌詞解釈としてここが一番原曲にない要素がマッチしててやべえと思います。ここゲームサイズに入れてくれよ!(無茶ぶり)
説明するまでもないですがハコってのはアイドルのライブ会場、特にその会場のキャパ(収容人数)を語る際によく使われる単語で、つまり大きなライブ会場(過去モモジャンの3人がライブをしてきたステージ)よりもモモジャンで小さなハコでやってる今の方が幸せであることを”らしい”という表現で過去からみた現在未来を示唆してるんですよね。すごすぎ!
なんでこの曲のフル何回も聞いてたのに今までこれに気が付かなかったんだ…?
逆に原曲のほうがよくわからんというかロミオとシンデレラの話してたら急に舌切り雀始まって急に和風になるんだ…みたいな困惑あります。

どうしよこのままじゃ私は
あなたに嫌われちゃうわ

この辺はわりとまんまメインストーリーで悩んでた雫と愛莉という感じはありますね。

アイドルどころか……友達失格じゃない……(愛莉)

でも私より欲張りなパパとママは今日も変わらず
そうよね 素直でいいのね
落としたのは金の斧でした

このへんは欲かいて愛莉と雫を失った事務所の愚かさを示していて、素直が一番っていう金の斧の寓話で締めてるんですけど、これ金の卵を落としたにもかかってる歌詞だとするとだいぶ面白いですね。
あとメインストーリー読み直していたらそれっぽいセリフあって良かったです。

わたしがアイドルでいたいんだから(愛莉)

原曲的には強欲に大きい箱欲しいし「私」も素直に「あなた」を求めて良い、何故ならパパとママは欲張りなのに愛し合ってるしそして私はその結果として別に全てを失っても構わないみたいな解釈できるの激アツですね、バッドエンドを目指す破滅性。

嘘つきすぎたシンデレラ
オオカミに食べられたらしい
どうしようこのままじゃ私も
いつかは食べられちゃうわ

さて雫のキャラ作りという変身は単的に『嘘』と言っていいでしょう。嘘つきすぎたシンデレラには限界が訪れるわけですね。
嘘とオオカミといえばオオカミ少年です。オオカミ少年の教訓はそう、「仲間の信頼を失う」です。雫にマッチしてますね。

そしてオオカミに食べられるから連想されるのは赤ずきんです。赤ずきんも変身のモチーフがあり変身に騙される話でもあるのがやたらと雫との親和性が高い…。
原曲におけるオオカミは当然男性のメタファーであり、焦がれていた男性が逆に加害者だったという一転攻勢犯人判明解決編であるのですが、このカバーにおけるオオカミのモチーフは雫あるいは愛莉を追い詰めてアイドルでなくした事務所あるいは世間でしょう。
『シンデレラ』と『私』に関してはアイドルと素の雫で読めますし、また『シンデレラ』が世間が求める偶像としてのアイドルであるならば、『私』は彼女たち自身の理想とするアイドルとしてのギャップを示しているのかもしれませんね。

その前に助けに来てね

原曲は助けに来てねで不穏なまま終わるわけですけど愛莉と雫の過去の気持ちを歌う歌詞であるならこのあとモモジャンに入って助かりますからまあハッピーエンドにはなることがわかってるんですよね。ジュリエット回避成功!
そういえば赤ずきんで助けられるのは赤ずきんとおばあさんの『2人』なんですよね。
オオカミの腹の中からの生還といえばジュリエットも仮死状態から復活しますね。復活はモモジャンのテーマですから、なんだかんだジュリエットはモチーフとしてハマってるのかもしれませんね。(まあジュリエットは復活したあと自殺してしまうのでそこはあんまりよくないですが…)

おわりに

相当取っ散らかった感じはしますが、歌詞解釈なんて全体でやるもんじゃないし1ワード引っかかればそれで十分面白いもんだろという感じで。
思ったより雫と愛莉にマッチしてた歌詞だったのでは?って感覚が少しでも共有できたらうれしいです。
みんなもおもしろい歌詞解釈とか考察あったらおしえてくれよな!
この解釈を逆にミクさんに重ねるとそれはそれで作り手である人類に反発する電子の歌姫みたいな感じになってそれはそれで面白かったりします(無限解釈連鎖編)。

そんな感じで~。