なんもわからん

さっき作った

プロセカ『STEP by STEP!』感想・読解みたいなやつ

『STEP by STEP!』感想読解書くぞ!

このイベントの位置づけについて

さてイベントの話をしていく前に、少しこのイベントの位置づけについて整理しておきましょう。

このイベントはモモジャンの進級前ラストイベントということで複数のイベントストーリーからの流れを汲んだクライマックスという形になっています。
前モモジャンイベスト『Re-tie Friendship』はみのりの転科という話を受けてのストーリーですので、順番は逆ではありますがむしろみのりが主役のこのストーリー『STEP by STEP!』が大きな流れとしては本筋で『Re-tie Friendship』がその話を受けた外側、裏側を描いたイベントと見るべきでしょう(もちろんこれは大きなストーリーの流れとしての話であって、愛莉というキャラクターにフォーカスした場合はみのりの話が裏側になります)
そして『Re-tie Friendship』の流れを受けた前混合イベ『船出の前のワンデイトリップ』で描かれた遥と1-Cの友情が、今回のイベント『STEP by STEP!』の後半部分にそのまま合流する形になっています。

直接的な前後編ではなく、時系列順に3つのイベントが並んでいるという形式でもないので多少変則的な構成ではありますね。

モモジャンのアーティストとしての山場は一旦ワンマンイベント『拝啓、あの頃のわたしへ』(2022/10/12~)でひと段落しており、そこからが進級前イベントの流れだったと考えると、仕事を増やすこと・想いは変わらない想いを示した遥の『あの日の夢の、彼方向こうへ』を挟んで『弓引け、白の世界で』で踏み込めない・忙しさの中に存在する雫とまふゆの絆(日常)を、『ほどかれた糸のその先に』で雫と疎遠になってもわずかに残ったアリサとの絆を、『Re-tie Friendship』で愛莉と友人の絆を、『船出の前のワンデイトリップ』で遥がこれまで向き合ってこなかった友人との「普通」を、そして『STEP by STEP!』でみのりの普通・友情と変わらない想いを描いたと改めて振り返ると、わりかし一本筋が通った流れだったんじゃないかと思います。
モモジャンクライマックスなのに雫だけ今回の流れに絡んでなくない~?とはプレイ中思っていましたが、こうして整理してみると雫の『弓引け、白の世界で』がこのイベントの「忙しい中でも大事にしたかった友情と日常」の流れであり、『ほどかれた糸のその先に』も「消えずに自分の力になった仲間との友情と思い出」とちゃんと重ねられる位置づけのストーリーだったことがわかりますね。
混合バナーがめちゃくちゃキーストーリーの流れに絡んでいるプロセカ、奥が深すぎる…。もう全部のイベントにキーストーリーって表記つけたほうがいいですよ。

花里みのりが得た「アイドル」

『船出の前のワンデイトリップ』の遥は普通の学生であるみのりと対比されたキャラクターであり、その「普通の学生」と「アイドル」の背反性がイベントの中で否定され、アイドルであっても普通の友情は持っていいしその友情は忙しくても消えないみたいな話をしている、という話は以前に書きました。ここは『Re-tie Friendship』の愛莉も似たような話ですね。
maisankawaii.hatenablog.com


で、今回のイベントは「アイドルである遥・愛莉が普通の学生のような友情を持つ・取り戻す」、という方向と逆で「普通の学生であるみのりが普通の学生ではないアイドルになり学生生活を捨てていく上での友情」、という話です。
結論から見れば今回のイベントでもみのりは遥や愛莉たちと同じ「友情は消えない」という結論に達するわけで、二番煎じといえばそうかもしれませんが、方向性が逆なのに結論が同じになるのは冷静に考えるとすごい話…というか違う話ではあるんですよね。『船出の前のワンデイトリップ』での「普通の学生」と「アイドル」の友情の根拠となったのは「普通の学生もアイドルと同様に忙しい」という「普通」の平等性・対等さでしたが、今回のイベントでのみのりというキャラクターが最初に示したのは「仕事も友達も両方選びたい」という、対等さのイメージからは反対の、全てを拾い上げられないか・全てを拾い上げてみせるという強欲な精神性であり、これは「普通」ではない「アイドル」としての思想を思わせます。アイドルというイメージの持つ万能性であり、花里みのりとモモジャンという理不尽に対して諦めず全てを手に入れてきた過去に裏打ちされた思想です。

学校も友達も諦めなくていい方法があるなら、それが一番いいはずだもんね……!

単位制の情報を自分で集めて結論を出し、両親と対話する姿も良かったです。
しっかりと相手を説得するための材料を用意してプレゼンする、これは親子の話であり被扶養者が扶養者に筋を通すという関係だけではなく、1人の社会人として自分の道を自分で選ぶという、社会人同士の対等な対話でもあるんですよね。
このへんは両親と正面から向き合っての対話ができていないまふゆ・冬弥・絵名(・奏)あたりであったり、前イベント『Light Up the Fire』でようやく1人の人間として認められ秘密を告げられたビビバスの杏たちと比較してモモジャンというユニット自体が子供ではない「プロ」として親に認められ一歩先に行っている感覚がありましたね。ここにも「普通」を逸脱し「アイドル」となっていく姿があります。

そこまで考えられているのなら、もう俺から言うことはないな(みのりの父)

「夢の続き」、『Light Up the Fire』でも出てきた単語です。今回のイベントでみのりの両親の子供に対する信頼・応援の気持ちが描かれたことで、『Light Up the Fire』でまっすぐ言語化されていなかった謙や凪が杏にかけた気持ちが補強されたのではないでしょうか。

花里みのりが失っていく「普通」

夢を追うために単位制に進むことを決めたみのりは、残りの時間を過ごしていく中で何気ない日常が自分にとって大事なものだったことに気が付きます。
この日常を拾い上げて胸に刻んでいく描写は良かったですね。どんなファンのコメントも拾い上げて1人1人に真摯に向き合ってきたモモジャンのストーリーがあったからこそ、道端の花1つ1つに想いがあり、そして友達1人1人にも真剣に向き合ってきたことが感じられました。

そしてその大切だった日常が、普通科の学生としての生活が1つづつ消えていく、消していく描写の1つとしてバイトの退職があったわけですが、失われていく日常・思い出の流れが咲希の提案で遊び場に行って思い出を作るという新たな、そして最後の「友人たちとの日常」描写としてキャンセル・反転したのは良かったです。

ふたりが単位制にいっちゃったら、こうやってみんなで一緒に遊んだりすることも少なくなっちゃうってことだよな~って思って

ケーキを食べたり、スポジョイパークで遊んだり、ゲーセンに行ったり、特別でもなんでもない「普通の学生が放課後普通に遊ぶこと」がみのりと遥にとっての「最高の思い出」として刻まれたのは良かったですね。

みんなと一緒に遊べたこと、一生の宝物にするから!

遥や愛莉のイベントストーリーでは失った側として「疎遠になっても友情は不変でありまた遊べるし続けていくことができる」という未来への希望が語られましたが、今回のイベントストーリーで描かれたのは「友情は不変であるが疎遠になる前の”今”が最高だった・この思い出と共に先に進んで行ける」という普通の学生として歩んできた、何も失ってこなかったみのりの日常・友情・思い出・過去といった普通科の学生生活への別れを拾い上げていて本当に良かったです。
「普通」の思い出を「最高」として昇華しているのは花里みのりのアイドル性ではありますが、それは誰でもどこかに持っている友情・「普通」の気持ちでもあるんですよね。モモジャンというアイドルが届ける希望を受け取るという行為を成立させるのはファンの共感なので…。

そして最後にその最高の思い出として刻まれた友達との絆・ここまで歩んできたモモジャンの仲間との絆をバーチャルシンガーとの絆としてつないだのはちょっと強引な気もしますがそれでも良かったですね。
このバーチャルシンガーとの絆というのはボーカロイドとの絆とも読めて、ボカロ曲・音楽が離れていても・見えなくても・非実在であってもずっとあなたを支え繋ぎ応援して導いてくれるという話でもあるんですよね。これは別にこのイベントが特別そういう話をしてるわけではなくプロセカが常に描いてきた芸風ではあるのですが、「思い出の肯定」がテーマにあったこのイベントにおいてボカロ曲・音楽があなたに与えてくれた感動が・曲1つ1つを聞いていた日常があったからこそ我々は大人になっても・社会に出ても・音楽から離れても先に進んでいけるという印象を感じさせてくれました。
まあ私は別にボカロ文化と共に青春を生きてきたような人間でもないのでなるほどね~といった感じではありますが、こういう芸術があなたの人生の支えになるみたいな話めっちゃツボなので好きですね。

これまでの思い出・過去1つ1つに感謝をもって先に、STEP by STEP!。そんな感じでどうでしょうか。

おわりに

いや~いい話だったね~と思いつつもメインに描かれたのは普通の日常の尊さというテーマで、最後にMV出てくる集大成のクライマックスイベントとしてはちょっと盛り上がりに欠ける印象はあったかな…。とはいえワンマンがあの熱量でしたし時にはこういうタメを作っておいて次の流れで一気に爆発させるのも良いでしょうと思えるくらいにはプロセカのシナリオを私は信頼してますよ。

いよいよサービス3周年・進級し学年を重ねた2年目のモモジャンがどうなっていくかに期待しています。

おわりだよ~。

ぼくも基本的に感想「良かったですね」しか言えてない(語彙力ゼロ)