なんもわからん

さっき作った

プロセカ『Light Up the Fire』感想・読解みたいなやつ

『Light Up the Fire』感想・読解書くぞ!

雑感

いや~~~~重かったね~~~~~。
『RAD WEEKENDの空気を作り出したのは何だったのか』というもう最初期から3年近くストーリーの中心にあった問いの解答がようやく回収され、古瀧凪をはじめRADderの過去も明かされるってストーリー的にバリバリ重要なイベントでした。そして構成的にも今までビビバスのイベストで『THE POWER OF UNITY』(2022/05/20~)以降出番はありつつも遠野新以外は掘り下げがあまりなく、サブキャラクターたちで何を描きたいのかが漫然としてつかめなかったのが、サブキャラ陣にフォーカスして「挫折」という内面を描くことで彼らの人間性を見せたことで、一気にストーリー上の役割を持つキャラクターとしてかっちりハマって魅力的になったのがとても良かった。まあ現状彼らの行方はいかにという感じですが…。

そしてその絶望的な空気の中でも折れないビビバスという挫折と失敗から何度も立ち上がってきたユニットの芯の強さと大河の想い…とにかく今回のイベントは見ていきたい部分がありすぎますね!というわけで読解やっていきましょう。

古瀧大河は何がしたかったのか

……すみません。まだ、大河さんが何をおっしゃりたいのか理解できないので……、もう少し詳しく教えてもらってもいいでしょうか(冬弥)

今回のイベントは唐突に告げられる凪の死、そして大河とのバトルで始まります。
その唐突な展開に杏たちはついていけませんでしたが、今回のイベント後半の過去回想で大河がバトルを挑んで杏たちをボコボコにした理由は大体明かされていると思います。

ここを読む上で多少複雑なのは、大河が杏たちのために動いている思惑は「2つある」という部分です。
もちろん1つは凪が生前語り、謙が継いだ「自分たちの音楽に影響を受けた次の世代が育ち、RADderの先を進んでいってほしい」という遺言。そしてもう1つは大河自身の想い「自分たちの音楽を必ず世界一にする」、つまり次の世代にRADderを超えさせない、「古瀧大河」こそが杏たち「次の世代」ではなくRADderの先を継ぐ存在だという凪の想いと一見矛盾した想いです。
この2つの想いは一見矛盾していますが、どちらの想いにしても大河がやることとしてはシンプルでRADderの代表として歌い実力を示すだけです。

次の世代がRADderに影響を受け、先を進むには、RADderの音楽を生でまだ聴いたことがないこはねや冬弥たちにもRADderの歌を聴かせないといけないですし、子供のときに聞いた”憧れ”としての歌と超えるべき”壁”としての歌は違うものでしょう。

俺は――知りたい。俺と……俺達と、RAD WEEKENDに、どれだけの差があるのかを

そしてRAD WEEKENDの続き、「RADderの先を進むものは次の世代ではなく自分だ」というある意味大河が凪や謙が次の世代にかける夢を否定するための歌でもある…というにはまだ実力差がありすぎるわけですが、未来のライバルに対して自分の実力を示す歌でもあるのではないでしょうか。

要するに2つの想いが矛盾・相反する…というよりは大河は凪や謙の「次の世代が自分たちを超えていくのを見たい」というのを一旦受け入れた上で、その「次の世代」より自分の方がRADderを継ぐものとして正当だとして否定したいという想いがあるわけです。そしてそれには、そもそもライバルとなる「次の世代」が自分たちを超えていることが必要で、杏たちはまだその土俵に立ててないから力を貸しているのではないでしょうか。

物は言いようだろうが。凪、お前はここでお前の夢を、俺達の夢を、他人まかせにしていいのかよ

この辺の大河の心情はどちらとも取れますが、ビビバスがここまで描いてきたこの街の文化として、「強い相手にバトルすることで成長してきた」があるので、バトルを仕掛けること自体がライバルに塩を送る行為ではあるんでしょうね。

で、もう散々先にその話をしてしまっているんですが、そもそもこのイベント時点での二段階覚醒した杏を含めたビビバスは、もう大河の認識ではRAD WEEKENDでの大河を超えてるんですよ。まあ「RAD WEEKENDのRADder」ではなく「RAD WEEKENDの大河」という微妙なラインで予防線は引かれていますが…。

(俺達の夢を、こいつらに見せる。……お前達も、それを望んでるだろ?)

だからこれはビビバスがずっとやってきたRAD WEEKENDを超えるって話ではもはやないんです。RADderの想いを継ぐものはどちらか、それがRAD WEEKENDで見せた凪+謙vs大河というバトルであり、その夢の続きとしてビビバスたちが巻き込まれてきているという話でもあるんですよね。

古瀧凪と「街」と「ボーカロイド文化」

続けて凪の話をしていきましょう。
自分の死を覚悟した凪が最後に願ったのはこの街で歌うことでした。

これは乱暴に一言で説明してしまえば”継承”の話です。
街で歌を教わり、街で歌い、そして街で歌を教えて次の世代に繋いできたというこの街の永遠性。凪は最後に街で歌うことで次の世代に自分の夢をつなぎ、そして街の中で語り継がれることで永遠の存在になろうとしていました。
そういう意図は込められているのですが、まず凪が語ったRAD WEEKENDのコンセプトは「思い出のCOLで私達の青春をもう一度見せる」なんですよね。
RADderがユニットとして成功し売れている現在ではなく、最も熱かった青春時代の再現。歌による過去の再現可能性の話であり、歌が時を超えて語られ続けること。それは死をも超越した永遠の話でもあります。

ちょっとイベントストーリーの内容からは離れてしまうのですが、このへんの時の超越、「忘れられない・記憶に残してほしい歌」「永遠に続いてほしい歌」みたいなテーマってボーカロイド曲…というかボーカロイドのキャラソンイメソン(?)でわりかし頻出のテーマだと思うんですよね。
私は全然ボカロ曲に詳しくないのでそうでもねえよって言われたらすまんなんですがプロセカ実装曲で挙げるなら『ラストスコア』の「何百何千何万年も枯れぬ命に」とか『Meteor』の「この歌をこの声を ずっと忘れないでいてね」とか『ヒビカセ』の「覚えていてね 私の声を」とかそうじゃないですか。『初音ミクの消失』の「名だけ残る」とか今回の凪も言っていましたよね。

杏達が歩く、次の世代が歩く――そんな未来を、一緒に見たいんだ

「私が消えても歌は消えない」もそうなんですが、逆に「作曲者が死んでもボーカロイドが歌い続けていく」みたいな曲も多いですよね。ボカロ文化の継承テーマ。
やっぱりプロセカってボカロ文化に対するリスペクトの強いゲームですから、こういう「曲に影響を受けて次の世代が活動する」だとか、「ずっと語られ続ける存在」みたいな話はボーカロイド文化を意識した話づくりで、そのボカロ文化こそがビビバスが描く「街」なのかなと感じましたね。「歌を教わる・教える」もいわゆるボカロ文化における「調教」みたいなところありますし。

そのボカロとの重なりを思うと、今回のイベントでラストまでバーチャルシンガーたちが絡まず、最後の杏たちの凪へのメッセージを別の世界で見守っていたその姿が、人間の歌を語り継いでいくものとして、そして「空の上から見守っている」という表現をした凪も同じように見守っているのかもしれないと、死後の世界を明言せずとも思わせてくれて良かったですね。

言いたいこと……いっぱい、あったのに……っ

なんというか今回の話ってどんな思惑があったにせよ街の人も大河も凪も杏を騙してきたわけで、それが酷いことだって一面はどうしてもあるんですよ。
杏に歌が好きなまま真っすぐ育ってほしかった、倫理を差し置いてでも歌を続けて欲しかったという願いの話で、どんだけこの街の人間は歌のことしか考えてねえんだって話ではあります。でもその結果として、事実として杏は歌が好きなまま真っすぐ成長し、凪の死を受け止めた上で、改めて歌いRAD WEEKENDを超えることしか見ていない。
ビビッドストリート、マジで歌を中心に全ての思惑が回っているセカイなの、本当にどうしようもなくて、でもそんなどうしようもない街だからこそビビバスというユニットが、杏というキャラクターが生まれ育つことができたんでしょうね。

Vivid BAD SQUADとサブキャラクターたち

さて主役となる「次の世代」たちの話です。
彼らは大河さんにぼこぼこにされ心折れるわけですが、遠野新から見ていきましょう。

彼の問題点は大河が言ったように相棒だった颯真の夢を意識しすぎてきちんと街、オーディエンスを見れていないこと…ではあるのですが、整理するために必要な要素としてRADderの過去回想でわかりやすく描かれたテーマ「夢≒他人の期待を背負うことの否定」があります。

「街を見ること」の話は今までのビビバスのイベントで描かれてきたように、「他人の期待に応えたいという自分の想いをきちんと見つけること」…みたいな話ですよね。この辺の話は以前の記事でも書きました。
maisankawaii.hatenablog.com
今回のイベントでも大筋でそこは変わっていないかと思うのですが、フォーカスしてる部分が多少異なっていて、「他人の期待を自分の中で他人のための想いではなく自分のための想いとして変換できているか」になっているんですよ。この辺は大河の項でも書いたように「外から見てやっていることは同じでも他人の期待と自分の想いは異なる」って話ですよね。

前は街を見ろ……って言ったが、そのためにはまず、お前がお前自身を見る必要があるな

大河が新に対して2度言った「お前のために歌ってんじゃねえか?」私は最初「ちゃんと背負え、お前のために歌うな」という反語の意味合いととらえていて、新自身ももそうとらえていたでしょう。ですが話を整理していくとおそらくこれは「背負った上で颯真のためでなくお前のために歌っていることを自覚しろ、つまりお前のために歌え」というそのままの意味の激励なんですよね。大河がRAD WEEKENDで凪のためでなく自分のために歌い続けることを決め、謙は同じ思いを背負っても違う想いを抱いたように。いや~めんどくせえ!でもこの辺の言葉の足らない部分がプロセカ読解やってて一番面白いところだと思います。

「他人の夢を背負うな」という目線で見ると颯真の夢と自分の夢をきちんと切り分けられていない新はまだまだといったところであり、「RAD WEEKENDを超えるためのイベントをやる」という「ビビバスの夢」で集められたメンバーたちもまだきちんとそれを自分だけの夢として咀嚼できていなかったのかもしれません。

ずっと……ズルズルここまできちまったのが……良くなかったのかもな……

それにしても三田洸太郎の独白は良かった…。大河から見たら全然足りないのでしょうが、泥臭くズルズルここまできた三田の頑張りと輝きを我々プレイヤーもビビバスメンバーたちもきちんと見てるからよ…。
他人の夢を背負うことについてはこはねや冬弥も同様ではあるのでしょうが、彼らはその中で自分の夢・目標としてそれなりの解答を今までのイベントで出していますからね。

この「他人(の夢)を背負って歌うな・お前自身(の夢)を自覚しろ」を意識すると今回のイベストかなり読みやすくなります。実はこれって今までのビビバスで、特に杏のイベストで最初から描かれてきたテーマですよね。一番最初のイベスト、『いつか、背中合わせのリリックを』(2020/11/30~) ではこはねを背負おうとして失敗しましたし、ちょうど今ガチャ復刻している混合イベ『青空に願うユアハピネス』(2022/05/31~)でも他人を意識してるとダメでありのままの杏に一番魅力があるという話をしていました。

(本能で――直感で歌うんだ!考えてちゃ絶対、大河おじさんには通用しない。するはず、ないんだから――!)

やっぱり杏というキャラクターの魅力は、この何も背負っていない、自由に歌が好きだという素の想いだけで歌っているときが一番強いところなんですよね。
RAD WEEKENDは凪の最後のイベントではありましたが、凪が爪痕を残すためだけの生前葬としてのイベントだけではありませんでした。ただ熱く盛り上がり、それだけで若者たちが自分たちの夢を持ち、謙も大河もその中で自分が抱くべき自分自身の夢を見つけたという要素こそが重要だったわけで、この辺りは杏が余計なことを考えず純粋に歌を愛するスタンスに通じていると思います。

「死を受け止める」で止まらず、「死を受け止め、乗り越え先に進む」という答えで、しっかりと今回のイベントで凪の死を受け止めた杏が改めてRAD WEEKENDを超えるという自分の夢を再認識したところは良かったですよね、まあバトル中はダメでしたけど…。

私のこと、ちゃんと話してほしいな

杏が強くなったら話してほしいという回想部分も良かったです。守られた子供としての存在でなく一人前の、凪の死を乗り越えて歌っていけるとして大河が杏を認めるところまできたという話なんですよね…。
作中の杏たちの視点では大河は「子供に本気を出す大人げない大人」として描かれとらえられていましたが、なんのことはない、一人前の対等な存在として認めたからこその”本気”だったという話です。

タイミングの話をもう1つ、大河が街を離れてアメリカに帰る前の最後のバトルというのも凪の別れの前の最後のRAD WEEKENDと重なる内容ではあります。自分が去っていく前に次の世代に何を残せるか、みたいな回りくどい考えは意識はしているのでしょうが、やはりRAD WEEKENDのように本気で音楽でぶつかることでしか伝わらない、決められない、自分だけの夢は見つからない、みたいな経験上の結論を抱いてのバトルではあったのでしょうね。

そしてサブキャラ陣が折れていく中で揺らぐことがなかったビビバスメンバーの強さですよね。
これまでのイベストで何度も高い壁にぶつかり、それでも立ち上がってきたという過去に裏打ちされた彼らのメンタルの強さには納得がありました。
凪が灯した火を受けて、さらにサブキャラ陣にも火を灯していく。継がれていく継承の火。Light Up the Fireというわけでそんな感じでどうでしょうか。

RAD WEEKENDを――超えよう!!

おわりに

いや~長くて要素多い上に難解!記事に書きたいことありすぎてちょっと取っ散らかってしまった気がしますね…。
内容としてはシンプルにボコされたけどまた立ち上がりましたってだけの話ではあるのでついていくのは簡単だとは思うのですが、ここからサブキャラ陣をどうやって再起させるのかは気になるところですね。
おわりだよ~。

じゃあね!