プロセカ『天の果てのフェニックスへ』感想・読解みたいなやつ
ちょっと遅くなったけど書くぞ!
明日、3月11日15:00より
— プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク【プロセカ】 (@pj_sekai) 2023年3月10日
イベント『天の果てのフェニックスへ』を開催🔥
慶介達の提案により、フェニックスステージの30周年記念公演に出演することとなった司達。なんと演目は司が憧れているスターが出演した作品だった。彼と同じ役をかけたオーディションに挑む司だが——!?#プロセカ pic.twitter.com/zNBHix9jlx
フェニックスワンダーランドという「場所」について
さていきなり入りますが、ここ最近のワンダショのキーストーリーでは宣伝公演編でフェニックスワンダーランドを飛び出し各地で公演を重ねながら世界の広さを知りながら成長し、そこから正月公演、ワークショップとこれまたフェニックスワンダーランドの「外」で学びを得てさらなる成長を経てきたわけですね。
その流れの中には「いずれフェニックスワンダーランドを飛び出して世界で輝くスターになる」って将来の別れの話が宣伝公演第1回イベント『マーメイドにあこがれて』(2021/08/20~)からあったわけで、当然もうフェニックスワンダーランドに用はない…とまでは言わないですが通過点でしかないみたいな雰囲気が全体にあったわけです。
直近のキーストーリー『夢の途中、輝く星たちへ』なんかもう直接的にその後の話してますしね。
前置きが長くなりましたがこのイベント、『天の果てのフェニックスへ』ではそんな中でフェニックステージと青龍院櫻子という圧倒的上位存在がフェニックスワンダーランドの中に実はあったという、これまでの「フェニックスワンダーランドを飛び出し外の広い世界の中で学びを得る」流れをひっくり返す強烈なインパクトのある展開なわけですね。
まずこの要素が面白いです。
天馬司の実力と理想について
外の世界での成長を描いて夢に一歩一歩着実に進んできた、あの玄武旭とダブル主人公の片割れを演じることすらできるようになった、という前提から、玄武旭と同格の存在である青龍院櫻子にまるで届かない、どころかフェニックスステージの名前もないような演者と同レベルかもしれない、自分と同じ実力の役者はそこらじゅうにいる、ということを思い知らされるのは司にとっても我々プレイヤーにとっても衝撃的でした。
学びや成長を2年かけて描いてきたうえで、「そんなことは他の役者にもできる(司と同様に学びや成長を他の役者も当然している)」というのは芸能界という題材を描く上であまりにも誠実であり、そして冷や水を浴びせられたかのように残酷な描写でした。身体作りには力を入れているという司でしたが、努力の度合いとしてはフェニックスステージの役者たちに比べてまるでトレーニング量が足りていないという描写がくるわけで、そりゃあ追いつけないのも当然だという話です。
「役作りが上手くできずに負ける」、ならまだしも「過去のストーリーで学んできた全ての技術を使い納得のいく役作りをしてきた上でそんなものでは全然櫻子の相手にならない」わけですからね。
司が目指すスターという場所は他の役者から抜きんでた上位存在である玄武旭や青龍院櫻子よりもさらに抜きんでた役者、天満星一なわけで、こんなところで他の役者といい勝負してる場合ではないというある種の傲慢さの中で、現時点では他の役者とあくまで同格以下でしかないという冷静で謙虚な自己分析がこの理想との距離という現実を浮き彫りにしています。
類が言うように司がここまで伸びてきたのはまだ役者としての経験が浅く、若かったという前提での急成長だったのもあって、今までのように成長した結果問題を解決してきた司にとってできることをすべてやった上で全く敵わないという挫折は相当の衝撃でしょう。比較対象が年上の役者ならともかく、櫻子は17歳ですからね。そして櫻子はこのイベントの中ですら努力し、役の完成度を上げ、成長を続けていることが描かれています。青龍院櫻子、マジで良いキャラだよな…。
青龍院櫻子と少年リオとフェニックスについて
このイベント、青龍院櫻子というキャラクターの見せ方が抜群に良かったですよね。
櫻子自体はかなり初期からいるキャラですし、そもそも名前もキャラも元から濃いですし、その実力の片鱗も端々で語られてはきていました。
にもかかわらず、今回のイベントでの「高い壁」としての役割は圧倒的な、想像を超える存在としてインパクトを我々プレイヤーに残しました。
櫻子はプレイヤーにテンション高くておもしれ―女として、同じフェニックスワンダーランドの中のステージの花形として、どことなく司と似たようなキャラクターなのではないかという若干の舐めを含めた認識がされていたのではないでしょうか。
だからこそ、フェニックスの役に入った時の雰囲気、厭世的なセリフの抑揚、そして理詰めでの役作りで司とは格が違う存在として描かれた意外性に強烈な印象があったと思います。
話は変わりますが、少年リオが司に一見合わない配役なのに対して、最初に司に振られたうるさいニワトリ役、コメディリリーフってことなのでそれだけ聞くとかなりハマり役なんですよね。うるさいといえば司なわけで…。
なのでここ、「天馬司に相応しい役」と考えると「天馬司の実力に見合った役」のメタファーであると読むこともできて、じゃあ「少年リオ役」は何のメタファーかというと当然この役をやっていた天満星一が連想され、つまり「実力に見合わない役」「スターの役」としての意味合いがあるんですよね。なのでこの役を勝ち取ろうとすること自体が「実力の天井を超えられる」そして「スターになれる」を示すことになるわけです。あとは「自分とは違う性質の役になりきれる」ことこそが役者の本質と見ることもできるかもしれません。人ではない役を演じる櫻子のように。
そして少年リオに対するフェニックスは、人間では手の届かない、追いつけない、捕まえられない存在として描かれます。これは当然青龍院櫻子と重ねて描かれているでしょう。
単純に地を這う人間と空を飛べるフェニックスという対比もあります。そういった意味ではニワトリは飛べない鳥なのが面白いですね。少年リオ役も飛べない人間ですが、この話では飛べない人間でありながらスター、空に輝く存在という性質も付与されています。
この飛べない存在でも認められ、スターになり得るのかという、現状の司の可能性、壁を越えられるかと重ねて描かれているのではないでしょうか。
このイベントの結末は司が身の程を知って、それでも前を向いてスター目指して頑張ろうってオチなわけですが、これを「フェニックスの心臓を奪いとる」ではなく「フェニックスの翼を得る」で問題解決をしたリオと重ねるのが面白いですよね。
心臓を奪い取る、つまり殺す、櫻子を超えると意気込んでいたわけですがまあまだ全然そんなレベルじゃなかったねってことです。そしてフェニックスの翼と言えば当然連想されるのは生命の復活でしょう。弱さを認めてスターへの夢に向かって再起しようという感じでしょうか。オリジンである天満星一との邂逅もまた1からのやり直しという印象がありました。
自分のフェニックスを追って天満星一の公演を見に来た司でしたが、子供の頃のような憧れも、役者になってからの目標に近づけているという実感もそこにはなく、ただ「遠い」という感情のみを思い知ることになります。
しかしそれこそが役者としてようやく「目標と自分を比較できるようになった」つまり「役者として並び立とうとしはじめた」ことに他ならないでしょう。
そしてこのイベントスチルです。
このイベントは予告からイベント画面からプレイ後のリザルト画面までずっとこの顔が出てくるわけで、プレイヤーはああ司敗北イベでオデに失敗するんだろうなあという前提でこの泣き顔を見ながらストーリーを読むことになるわけですが、このイベントスチル自体はオーディションではなく天満星一の舞台を見たときのものなんですよね。
ここまで説明してきたように、プレイヤーの想像、思い込みを裏切ることで司の無力さ、世界の広さという絶望をプレイヤーと司に感じさせてきたこのイベントの中でついに司の不屈の心・信念の強さを見せてプレイヤーの予想を裏切りオーディションに合格させたの、うーん話づくりがうまいぜという感じです。
そしてなんといってもオーディションの演出、迫真でしたね!
以前書いた『kick it up a notch』の感想記事の中で今後他ユニでも歌唱演出が出ると思うけど、他の演者に秋奈さんレベルの説得力出せるのか?みたいな話をしてたんですが、
maisankawaii.hatenablog.com
いざお出しされてみたらなんのことはない、ワンダショは歌唱で張り合う必要なかったんですね、役者としての『演技』の力で説得力を持たせる。はー、なるほどねという感じです。いや言葉にするのは簡単ですけどこれなかなかすごいことですよ…。声優なんてずっと演技してる中で演技をする演技がすげえって感じさせるの、すごかったねえ…(語彙力)。
その演技に櫻子もフェニックスも心動かされて、そんな感じで。いい話だったね~。
天馬司とワンダショと星の高さについて
さて高さの話にちょい戻りまして、地を這う人間、飛べないニワトリ、空を飛ぶフェニックスという話をしましたが、この線で見るとワンダショって高さをモチーフにした話結構ありますよね。
まずは天満星一、そしてスターです。これは当然空を飛ぶ鳥よりもさらに上の存在、宇宙にあるとても遠い存在です。高ければ高いほど強い。
今回のイベントでも引用された『まばゆい光のステージで』でも主人公と司が夜空を見上げ星を探す話がありました。
次に類、類は逆に高みに存在するキャラクター、そして他人を打ち上げるキャラクターです。『Revival my dream』でのジャンプ。その高さに地上で暮らす常人は恐怖し、ついてこれないという描写がありましたが、ワンダショのメンバーはその高さで跳ぶことができました。『白熱!神高応援団!』でも高さを克服し、二周年イベ『この祭に夕闇色も』で司を打ち上げたのも記憶に新しいです。
そしてえむ、彼女のイベントでの高さで印象的な場所といえば、観覧車、ジェットコースター、そして花火といったところでしょうか。
それは高みではありますが、スターの位置、司が目指す星の高さには程遠いと考えるとなかなか面白い感じがしますね。
寧々は…なんかあったっけ…?
それはそれとして今回のイベントで司の姿を見て自分もと奮起する様子で寧々メインへの布石みたいなのがたくさん置かれてたので期待ですね。
そして司、天馬という空想上の存在は鳥の高さまで飛べるのか、星まで届くのか、星になれるのか、ペガサス座…88☆彡みたいな感じでどうか。
おまけ
フォロワーが司と咲希を重ねてるのめちゃくちゃ良かったので勝手に引用。
グオー………… pic.twitter.com/ovvPS9dDih
— ありのか (@201008ar) 2023年3月19日
血縁でまとめきるのもなかなか乱暴なことなのだけど自身の無力を想いながらしかし星を見上げ手を伸ばし続ける天馬兄妹はちょっと良すぎる 無力を想ってた時間すら糧に変えてくのもプセの姿勢と合致してて……
— ありのか (@201008ar) 2023年3月19日
どちらも自己否定が似合わないキャラクターであるからこそのインパクト、とても良い。
おわりに
コネライではしゃいでたら遅くなっちゃったけど結構書きたいことあったね~。
全然イベントと関係ないけどいい写真撮れたから見て(自画自賛)(記事のあとがきを日記帳にするな)(はい)
楽しかったね… pic.twitter.com/3AUJufxJ8F
— hirobee (@ikubee) 2023年3月19日
— hirobee (@ikubee) 2023年3月19日
#コネクトライブ pic.twitter.com/xLLscCzvfZ
— hirobee (@ikubee) 2023年3月19日